日本財団 図書館


 

そのスペース・アーキオロジーの世界を使って、ともかく有名な遺跡、古代都市の跡をプロットしますと、全くこのように砂漠の間に入るわけです。砂漠のところに入ると、下に秒とか岩とか岩石がわかりますから、上から電波で見ると、下にもぐっていてもそれを反射してくるわけです。そういうことがわかるということであります。そういう技術を使って遺跡を調べてみようということです。
これは2つ画像があります。まず右側の画像ですが、これはシリアのパルミラの遺跡の跡です。何が問題かと言いますと、実は遺跡の跡はここなのです。黒くなっていますけれども、ここに黒くこう見えているところ、これは塩湖なのです。非常に大きい塩湖ですが、通常は乾いていますから塩が吹いているわけです。雨期になりますと、この青くなるところまで広がってくるわけです。水がたまるのです。ただし1週間か10日経つと消えてしまう。消えてしまうということは下に水が抜けてしまうのです。これはすごく広い砂漠ですけれども、このパルミラの都の前には実はこんなに大きな水槽があったわけです。おもしろいことには、この縁に沿ってキャラバン・サライがある。要するに井戸を掘ればそこに水があるということであります。こういうことがわかってきたのです。
地上で調べるより、上から見るとこのように新しい見方が出てくるというのが特徴であります。
これは中央アジアのウズベキスタンのホリズムという、パミール高原から西に向かってアラル海、カスピ海に向かっていくところにアムダリアという川があります。そのアムダリアがアラル海に落ちているわけですけれども、その途中でこの緑に見えているところが灌漑に使っていたのです。特にここは綿をつくっているのです。もとはこの川に沿ってあった緑が、この砂漠がこういうふうにずっと広がってしまって、しかもここに今大きなダムをつくっているわけですが、そのためにアラル海に水が行かなくなってしまった。ここには遺跡の跡がたくさんあります。これが今、そういうことで塩害でやられているわけです。これは人間のなせる環境変化の結果なのであります。
その中を見てみますと、こういう遺跡の跡がたくさんあります。下のほうを見ると、ほとんど昔砂漠の中にあったこの城の周辺にまで水が染みてきていますから、ここの状態もまた環境変化で変わりつつあるわけです。
上のところはゾロアスターの寺院です。こういうものも環境変化の中で今崩れ去ろうとしているわけです。
ウルムチを中心にタリム盆地のあたりを人工衛星で見ますと、今までこのあたりを長い間多くの人たちが調査されたのですが、人工衛星で見ると、どんな寒い時期でもどんな風の強い時期でも、常時ここがどう変化していくかがわかってきたわけです。これで何年も何年も撮影した結果を分析すると、何十年と調査したような結果がわかってくるわけです。どうやって水の供給が変わっていったか、どうやって植生が変わっていったか、季節によってどんな変化が起きているかということがわかるわけです。これが宇宙考古学の一つの特徴であります。
実際どのように変化しているかを現地で調べてみますと、こういうふうにカナートの跡があったり、交河故城の跡があったり、こういう状況はいったいどこに、どう位置しているかというのは、上から見ると非常によくわかってまいります。同時に地上調査をやりませんと、これらのデータが明確にわからなくなります。
代表的な例だけ申し上げますけれども、ここにあるのは中国のタリム盆地からタリム川が流れ込んでいたロプノール湖ですね。これが完全に湖が乾燥してちょうど人間の耳みたいになっています。これは活線、汀線です。渚がどんどんこの中心部からこちらに、こちらから乾燥していったわけです。小さくなってついに消えてしまいました。こういう状況がわかるわけです。
こうして人工衛星を使って、今までにない形で調査をするということが可能になりました。そこで私たちは人工衛星で調査をするという方法で、先ほど申し上げたような全体を調べてみようということを行ってみたわけです。人工衛星を使って宇宙から遺跡を調べるという意味ではなくて、むしろ古代の環境がどうであったかということを調べることにしたわけです。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION